こんにちは、ニックです。
これまでに技術士試験のための勉強法についてまとめた記事を作成しましたが、具体的な技術的事項については記載していませんでした。
この理由は、私が合格してから10年以上経過しているため、手元の骨子・論文ストックは情報が古かったことによります。(勉強法は今も変わらず通用すると思います。同僚や部下は紹介したやり方で、最近も受かっていますので)
せっかくブログもはじめたので、自分の知識のアップデートも兼ねて、私が業務で関連する主要テーマについて、技術士試験で課題になりそうなテーマのまとめ記事を作成することにしました。
私は技術士は建設部門(河川・砂防及び海岸・海洋)(※以後、「河川砂防」と略記)で取得しており、業務的にも河川砂防に包括される仕事をすることが多いので、河川砂防の主要テーマについてピックアップして整理していくつもりです。
趣味でやっているので、途中で飽きたり、需要がなければ、更新が止まるかもしれませんが、ひとまず始めてみます。
記念すべき第1回のテーマは「流域治水」です。
私は河川計画に直接かかわる仕事ではないのですが、流域治水について関わる場面が職務でも増えてきているので、現時点はもちろん、今後数年にわたって重要なテーマになると確信しています。
なお、本記事は建設部門(河川砂防)で技術士二次試験を受験予定の方をメインターゲットにして作成しています。
(1)技術士試験での「流域治水」の取扱状況
「流域治水」という言葉は、令和2年7月に社会資本整備審議会にて提出された答申の中で、正式に取り上げられ、河川行政の中心に位置するテーマです。
当然、技術士二次試験の設問でも取り上げられる可能性は高いです。以下は、直近4年間の建設部門(河川砂防)での出題傾向です。
直近4年間の傾向では「流域治水」というズバリの単語こそないですが、密接にからむ設問が多数あることが分かります。
災害の激甚化に関する設問は、2年に1回の頻度で出題されています。
課題の重要度と水局での取り扱いを見れば、令和5年度でも必須科目も含めて「流域治水」に関連する設問が作られる可能性が極めて高いと考えています。
というか、、、河川行政としては、まさに一丁目一番地の課題であり、流域治水に関する設問をしなければ、何を聞くのだ?というくらいのテーマだと、私個人は思っています。(出題されなかったらごめんなさい)
今回は、国土交通省の公表資料の中で、非常にわかり易い資料(※)がありましたので、こちらの資料からピックアップしたものを中心に解説していきます。
※ 出典:「流域治水」の基本的な考え方(国土交通省 水管理・国土保全局)
なお、こちらの資料について、本記事では『「流域治水」の基本的な考え方』と呼びます。
(2)定義
本記事で参照する『「流域治水」の基本的な考え方』のタイトルにある、以下の記載が簡潔かつ具体なイメージが出来る表現となっているので、こちらで覚えておくのが良いと思います。
~気候変動を踏まえ、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う総合的かつ多層的な水災害対策~
以下、参考です。
令和2年7月に社会資本整備審議会より提出された答申の本文の中で、以下の様に記されています。
本答申では、~~~(中略)~~~、社会のあらゆる関係者が、意識・行動に防災・減災を考慮することが当たり前となる、防災・減災が主流となる社会の形成を目指し、流域の全員が協働して流域全体で行う持続可能な治水対策(「流域治水」)への転換を提言する。(※)
※出典:「気候変動を踏まえた水災害対策のあり方について ~あらゆる関係者が流域全体で行う持続可能な「流域治水」への転換~ (社会資本整備審議会 令和2年7月)
答申は本文は図表無しで60ページを超える内容なので通読するのはかなりキツイですが、概要の方はパワーポイントで15枚程度にまとめてくれており、比較的読み易い資料になっています。
『「流域治水」の基本的な考え方』を読まれた後に、余裕があればこちらも読んでみることを推奨します。(本文の方も上記の「答申」のリンク先からアクセス可能です。)
(3)背景
流域治水が導入されることになった背景は以下のとおりです。
- 降雨トレンドの変化
- 豪雨災害の頻発・激甚化
- 水害被害額の増加
- 気候変動等による水害リスクのさらなる増大の可能性
※ 『「流域治水」の基本的な考え方』とは記載順序とまとめ方を変えています
(個人的な好み)
1.降雨トレンドの変化
従前からの継続しての傾向ですが、箱囲いや赤字のトレンドを知っておけば良いでしょう。
「気候変動の影響による短時間強雨の頻発」は一般人であっても日本で生活している人なら実感として感じるのではないでしょうか?
『地球温暖化に伴い、かつては亜熱帯気候で見られた「スコール」のような雨の降り方が日本でも頻発している。』そんな印象を個人的にはもっています。
2.豪雨災害の頻発・激甚化
平成27年以降の大規模災害の事例が整理されています。
近年は毎年のように豪雨災害が発生しており、これも日本に住んでいれば実感として感じるところでしょう。
論文試験での例示や具体の事例調査の為に、ここで紹介されている災害については1~2例、各自で詳細を確認すると良いでしょう。
自分の住んでいる地域の災害や自分が業務で携わたった災害など、とっつきやすい(=覚えやすい)事例をピックして1つでも良いので深堀しておくと良いでしょう。
例えば、私の場合は九州北部豪雨などは実際に被災したり、その後の災害復旧にも関わっているので、九州北部豪雨の事例調査を、、、という感じです。
取り組みやすい事例がなければ、社会的影響の大きさや教材の多さから令和元年東日本台風を選ぶのが良いと思います。
3.水害被害額の増加
豪雨災害の頻度が増え、規模が大きくなった結果、災害による被害額も増加傾向にあります。
特に広域的に深刻な被害をもたらした東日本台風(令和元年台風19号)が発生した令和元年の被害額が突出しており、過去と比べて河川整備が進んできた状況下において統計開始以来最大の数値となっています。
4.気候変動等による水害リスクのさらなる増大の可能性
先のスライドの解説でも述べましたが、ダムや遊水地、河川掘削等の河川整備が進んでいる中で、氾濫危険水位を超過する河川の数が増加傾向にあることが分かります。(数字は覚える必要はあありません)
現段階でも気候変動等による影響で安全度が低下している可能性があり、今後、地球温暖化等に起因する気候変動による影響で更に激甚化する可能性があります。
(4)気候変動の影響
本記事の解説の中で最も重要なスライドのひとつです。
『過去の傾向ではなく、未来の気象変動の影響を考慮して計画を見直す』ことにより、計画策定の考え方が従来と大きく変わったことを押さえておきましょう。
また、スライド中の気候変動の影響を示す表の数字はしっかり覚えておきましょう。
2度上昇で降雨量約1.1倍、流量約1.2倍、洪水発生頻度約2倍。
普段は試験の為に数字を覚えることは特に推奨していませんが、この表は例外です。河川砂防のあらゆる設問で使える数字です。
重要な数字です。
(5)「流域治水」の基本的な考え方
引用した資料の表題に使われているスライドです。
この頁はエッセンスをシンプルにまとめてくれています。
骨子や論文は、このスライドに記載される3つの対策に分類して整理を行うことになるので、次のスライドと併せて良く理解しましょう。
(6)「流域治水」の施策
ポイントを箇条書きにしてみます。
「流域治水」としての新たな施策はソフト対策が多い印象です。
その中でも、私が象徴的と感じたものをピックすると以下のとおりです。(ハード対策も含みます)
本来は幅広に施策を学ぶべきですが、時間が限られている方や業務上あまり、河川計画分野にあまり関係しない方は、このあたりをまず押さえておくのが良いと思います。(個人の意見です。)
- 事前放流(利水ダムの協力を得た対策) 【ソフト】
- 利水ダムの放流設備増設による事前放流の効果の最大化【ハード】
- マイタイムライン【ソフト】
- 水害リスクマップ【ソフト】
- 土地利用規制(新たなもの)【ソフト】
菅元総理が官房長官時代に導入した利水ダムの事前放流の効果は凄まじいです。
(7)参考
3つに分類された対策における、個別具体の施策については国土交通省のHPからダウンロードできる「流域流域治水施策集 目的とそれぞれの役割」に詳細に説明されています。
全て読むには量が多いですが、気になる施策を中心にピックアップして目を通しておくと良いと思います。(勿論全部読んでも良いです。)
下表のまとめ頁も見易く、実務でも使い易いものに仕上がっています。
URL(流域治水施策集)を張っておきますので、気になる施策はこちらを見て概要を掴んだうえで、深堀していくと良いと思います。
技術士試験に受かるだけなら、個別施策の勉強は紹介した事例+1,2例くらいで恐らく大丈夫だと思いますが、各自の職務、業務に応じて興味のある施策も読んでみると良いと思います。
まとめ
本記事では、流域治水の概要について取り纏めてみました。
導入背景から、基本的な考え方、具体の施策の3つに分けて整理をしてみましたが、このあたりを掴んでおけば、試験問題に対する骨子の作成に役立つと思います。
本記事の内容を箇条書きにして、個別施策をピックすることで、自分で手書きの骨子を組んでみると頭の整理が出来ると思います。この作業は必ず自分でやりましょう。
※後日、骨子の例を入れた形でリライトする予定です。
また、個別施策のうち、私が興味がある施策については個別記事を作成したいと考えています。興味がある方は読んで頂けると嬉しいです。
技術士試験の勉強は、広範な知識が求められ大変ですが、ポイントを押さえて丁寧にまとめていきましょう。
技術士資格へ挑戦する方を応援します!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。